『信頼・規律・矜恃』
二宮町消防本部は、神奈川県の南西に位置し、中央部を2級河川の葛川が流れています。南部は東西の幅3.3km、北に進むにしたがって狭くなり南北に3.8km、面積は9.08k㎡で人口は約27,000人です。町の東西に東海道本線、東海道新幹線、国道1号、西湖バイパスと小田原厚木道路。南北には県道秦野二宮線が走り、それぞれ町道と連結し交通至便なところです。
気候は温暖で、豊かな自然と新鮮な海の幸・山の幸に加え、純朴な風土が素晴らしい生活環境です。また、毎年1月上旬から2月中旬にかけて管内にある吾妻山で菜の花が満開となり、その景色を求め多くの観光客が訪れます。
【二宮町消防署ってどんなところ?】
定数51名、1本部1署で構成され、そのうち署に勤務する職員は28名。
救助工作車1台、水槽付きポンプ車2台、救急車2台、指令車1台、積載車1台、広報車1台の8台で運用しています。平均年齢は32歳と非常に若く活気があり、互いを尊重し合い、上下左右のコミュニケーションの図れた職場です。
また、小規模消防が故に職員みんなが「顔の見える関係」にあり、有事の際には消防本部全体が一致団結し、災害対応に臨んでいます。と美濃島消防司令補。今回はそんな二宮町消防署に納車された救助工作車Ⅱ型をセイバーズがリポート!
救助工作車 | Ⅲ型 |
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シャーシ | 日野レンジャー |
全 長 | 7,860mm |
全 幅 | 2,300mm |
全 高 | 3,200mm |
ホイールベース | 3,790mm |
最小回転半径 | 6.5m |
車両総重量 | 10,980kg |
乗車定員 | 6名 |
総排気量 | 5,120cc |
駆動形式 | 4×4 |
ウインチ | 大橋機産(株)製 |
クレーン | タダノ2.93t |
配備年月日 | 令和5年1月17日 |
艤装メーカー | 株式会社モリタ |
署で力を入れている活動や訓練はありますか?
「当署は兼務隊であるため、基本訓練を主として実施しています。
火災救助は勿論のこと、交通救助、水難救助、山岳救助、NBC対応と多岐にわたる内容を訓練計画で定め、あらゆる災害に備えて訓練を実施しています。近年では特に、土砂災害対応訓練に力を入れています。また、スローガンである『信頼・規律・矜持』の精神を基に、町民の安心・安全を担保できるように日々精進しております。」
車両紹介
▼ フロントデザイン
▼ バックデザイン
▼ サイドデザイン
▼【電動油圧救助資機材】
資機材単体で使用することができ、油圧ホースの接続も不要であるため隊員の機動性及び操作性の向上が見込まれる。
▼【スマートドック】
無駄な作業を無くし、呼吸器を引き抜くだけで背負うことができます。
▼【スタブファスト】
車両の安定化が求められる事故車両の横転・転覆事案に対して使用。支柱を使用し車両と地面に対して形成される三角形により、車両重量を分配させ安定化を図る。救助活動をより安全に確実に行うことが可能。
▼【ロープ、スリング収納】
▼ 【根切りチェーンソー】
土砂災害現場において、地中に埋もれた木材、倒木を容易に切断することが可能です。通常のチェーンソーより耐磨摩性が優れており、効率的に切断ができます。
▼【右側面シャッター】
バスケット担架を分離せずに縦で収納してあるため、すぐに取り出すことができ、迅速に対応できます。
▼【空の収納スペース】
救助現場に応じた資器材を積載する、常時空の状態の大型収納スペースを設けた。(水難救助時はウェットスーツ、NBC災害時は化学防護服など。)常に空で降ろす手間がないので、時間短縮できる。
▼ 【クレーンU字環】
ブーム先端に新たにU字環を架装し、高所支点として活用できるようにしました。
クレーンのアウトリガーの敷板をマグネット式にしており、容易に設定することができます。
▼【手摺の増設】
天井部への昇降を安全に行えるよう、手摺を増設し、不要な段差をなくした。
※下写真、赤枠部分を増設して設計しました。
▼【ベルリング製ハイルーフ】
カーボン・中空モノコックインナーフレームによる、世界最軽量のハイルーフ、ベルリング製の「Fire Jacket」を採用。
強度も向上しつつ、積載空間も確保。モリタの新型車両での採用は全国初!!(撮影当時)
▼【車体上部】
アームの配色も、黒と白のコントラストでスタイリッシュ。
▼【車体後部】
レスキューロープセット三脚を積載するために、後部長物入れを最大まで広く設けた。
▼【執務室】
▼【防災対策室】
▼【食堂】
▼【訓練棟】
▼【団本部室】
▼【ロッカー】
▼【トレーニングルーム】
▼【仮眠室】
▼【ニーノとミーヤ】
二宮町のPRキャラクター「ニーノとミーヤ」が二宮町消防とコラボレーション!!所有しているほとんどの車両にいるので是非、見つけてみてね!
今までに、特に印象に残った救出活動などはありますか?
『平成25年10月、台風26号通過後の影響による高波の中、海岸付近で遊んでいた子供2名が海に流された水難救助事案です。』
(市街地と海岸を結ぶ西湖バイパス高架下の歩行者通路で、トンネル内に打ち寄せる波で遊んでいた小学生5名のうち2名が波にさらわれたもの。)
この事案では救助工作車1台を含む計6台の車両が出動し、約1カ月間における捜索人員は2,500名でした。(消防団、近隣消防本部、横浜市消防局航空隊、神奈川県警、海上保安庁、その他ボランティアの団体を含む。)
発災日当日は台風の通過後。
大雨警報、洪水警報、暴風警報、波浪警報、雷注意報が発令されており高波で海岸に近づくことが不可能だったため、ヘリコプターの要請を行うも強風により離陸できない状態でした。(発災から40分後離陸可能となり、発災から1時間後現場上空着となった。)そのため海面及び上空からの捜索を行いましたが捜索範囲を絞り込む事ができませんでした。
翌日はそれに加え潜水活動を開始。日没まで捜索するが見つからず、その日の活動を終えました。
夜8時頃、翌日の捜索範囲等を署内で検討していると、自主的に捜索していた町民の方から「突堤付近に浮かんでいる子供1名を発見した。」との連絡。現場は高さ4mほどの突提の付近で、活動時は突提まで波が打ち寄せていました。
隊員の安全確保のため原則夜間帯の入水は行いませんが、要救助者の位置が突提付近であり、救助工作車の照明及び各車両の投光器等により現場活動に必要な照度が確保できたことから、救出可能であると判断しました。突提まで波が打ち寄せていたため、隊員は救出用の資機材を砂浜の安全な位置で準備し、ピット(係留柱)に確実な自己確保を行ったのち入水及び救出を行いました。
今回、他機関及び多くのボランティアの方々の協力を得ましたが、合同で捜索するうえで最も重要である迅速、確実な情報収集及び伝達の必要性を感じた事案でした。今後も協力体制をさらに強化し、当消防においても災害規模の事前把握や災害予防にも力を入れて町民の信頼に応えたいです。
【他機関との連携(本事案)】
119番通報後すぐ海上保安庁および
横浜市消防局航空隊へ出動要請。
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ネクスコへ台風により通行不可であった
西湖バイパスへの立入許可の承諾を得る。
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近隣市町である小田原市、
及び大磯町へ捜索依頼を行う。
難しかった点
消防間(消防団を含む)では共通波を使用し情報共有が行えるが、海上保安庁(陸隊、特殊救難隊(巡視艦及びヘリコプター))及び神奈川県警(所轄、航空隊、機動隊)との情報共有は口頭での伝達であったため時間を要した。
▼【今回お話をうかがったのは。。。】