saver's

守るために働く人々をサポート

VOL.22 富士宮市消防本部 西消防署北分署の「救助工作車Ⅱ型」をセイバーズがレポート!

2023年10月

▲訓練棟から見える富士山:塩川真之消防司令撮影

『最先着隊として連携強化

富士宮市は富士山の南西麓に位置し、広大な森林や豊富な湧水などの自然に恵まれ、市域の46パーセントが富士箱根伊豆国立公園に指定されており、南は富士市、北は山梨県と接しています。

また当市は、平成25年6月に世界文化遺産として登録された富士山をはじめ様々な観光資源を有しており、行楽シーズンになれば多くの方々が訪れる町です。西消防署北分署管轄エリアは面積も広大で市内の中でも有数の観光資源が点在していることから、市外、県外から多くの方が来訪されるため交流人口が増大する時期もあり多種多様な災害や事故も発生してきております

 

【西消防署北分署ってどんなところ?】

西消防署北分署は富士宮市北部を管轄している署であり、庁舎敷地内にはヘリポートが併設されていて、防災ヘリやドクターヘリなどが離着陸する北部地域の災害拠点となっています。分署の平均年齢はおよそ36歳で、下は20歳から上は57歳と差はありますが様々な災害に対応できるよう隊員全員が年齢階級に関係なく同じ内容の訓練を実施するなど組織として一体感をもって活動しているため、休憩時間には全員で輪になって会話をしたりします。また、出動後には隊員同士が自由に意見を交わせる雰囲気づくりをしており、様々な世代の意見を交換することで現状に満足することなく最善の活動は何かを考え個人も組織も成長していけるそんな職場です。と土橋消防士長。今回はそんな西消防署北分署に納車された救助工作車Ⅱ型をセイバーズがリポート!!

救助工作車Ⅲ型
シャーシ 日野レンジャー
全 長 7,680mm
全 幅 2,320mm
全 高 3,030mm
ホイールベース 3,790mm
最小回転半径 6.5m
車両総重量 11,905kg
乗車定員 5名
総排気量 5,120cc
駆動形式 4×4
ウインチ 大橋機産(株)製
クレーン -
配備年月日 令和5年9月12日
艤装メーカー 株式会社モリタ

署で力を入れている活動や訓練はありますか?

「当署は救急隊1隊及び警防隊を兼務している兼任救助隊が1隊となっています。これまでは災害種別によりタンク車と救助工作車を乗り分ける必要があり、個人装備を乗せ換える手間がありましたが、今回、新たに消防ポンプ付き救助工作車を導入したことにより災害種別により車両を乗り分ける必要が無くなり、職員の負担は軽減されました。

分署から北への出動は救助、火災のどちらの出動も最先着隊として活動することから、効率的な活動を実現させるため隊員間の連携強化と無駄のない行動を意識した活動への取り組みを行ってきました。

 

今回更新整備した車両は当消防では初のホースカーを積載していない車両ですが、ポンプ室上部にホースを島田折で収納できるスペースを確保したことまた、40㎜ホースを活用した火災防ぎょ戦術を隊員全員で検討し確立したことにより、少ない人員を活用し最大の効果が出せるよう、効率的な活動が実現可能となったことです。

また、管内の観光スポットに多くの方が見えられるため交通救助や山岳地域などの救助事案も発生することから、大型油圧器具を使用した救助活動や、高所、低所からの救出を想定したロープレスキューにも力を入れています。」

施設紹介

▲事務室

▲食堂

▲トレーニングルーム

富士山を眺めながらトレーニングに励むことができる。

▲仮眠室

▲会議室

▲ロッカールーム

▲訓練棟

▲訓練施設

▲消毒室

▲出動準備室

車両紹介

 ▲フロントデザイン

▲バックデザイン

後部シャッターから見下ろすようにデザインされた富士山の頂には『世界遺産の街、富士宮市として常に邁進する。』という想いが込められています。

▲サイドデザイン

サイドシャッターに描かれた白のラインで管轄を代表する白糸の滝、その上下を包むように青及びオレンジのラインにて警防、救助の守備力を表現している。

▲タンク水の車内操作

北分署管内は坂道が多く、車両の負担が大きいことからキャビン内にタンクのドレンスイッチ及び水量計を設置しました。これにより、緊急時には車両重量を軽量化し現場に出動することも可能になりました。

▲ラプターライナー塗装

車両のバンパー及びサイドスカート部分をラプターライナー塗装することにより、林道などで車体に傷が付きにくく見た目もスタイリッシュになった。

資機(器)材紹介

▲【島田折 ホース収納方法】

車両のポンプ室上部にホースを島田折で収納できるスペースを確保し、現場の初動をより早く行うことができる。

▲【バスケット担架】 

収納室内に収納することにより、取り出しやすさや劣化防止が向上しました。

▲【ロープレスキュー資機材

メインのロープバックにシステムを組めるギアを付け、初動と活動範囲を広げることが可能になった。

▲【資器材の電動化】

本車両のほぼすべての資器材を電動化しコードレスで活動でき、また、初動が早くなったことにより現場活動がより円滑化した。

▲マキタ社製

▲ウェーバーレスキュー社製

▲ルーフ上の高取の支点

本車両は救助工作車だが、重量の関係でクレーンを積載していない為、高取の支点をルーフ上に作成したことにより、低所からの引き上げ救助等に活用できる。

▲双方向巻き取り吸管

本車両はポンプ付き救助工作車であり、救助及び警防の資器材のスペースの確保のために吸管を双方向巻き取りにすることにより、1本でありながら両方向からの引き出しが可能になりました。

今までに、特に印象に残った救出活動などはありますか?

「令和5年8月、毛無山を下山中の5人パーティーが大雨によって増水した沢を渡れなくなったという日没が迫る豪雨の中で発生した山岳事故に伴う救助事案です。

 

この沢は登山道上にあり通常であれば水量のない沢ですが、日中から降り出した豪雨によって沢が増水、身動きが取れなくなってしまったという内容でした。当消防本部では管内の山岳事故に伴う救助事案は全て特命により編成された山岳救助隊が対応しますが、悪天候で日没が迫る時間的な猶予がなかったこと、標高が1000メートルを超えているため夜になれば気温が急激に下がり要救助者の身に危険が迫る可能性があったことから、北救助隊が先行出動し当消防山岳救助隊及び富士宮警察山岳遭難救助隊と共同救助活動を実施しました。

 

現場到着時、増水した沢の対岸に5人の要救助者を確認、声掛けにて怪我等がないことを確認するとともに対岸へのアクセスポイントを検索しました。豪雨によりかなり増水していましたが、岩により沢幅が狭所になっているポイントがあったため三連梯子を使用し橋を架けました。

出動した全隊が現場到着し活動方針を共有後、隊員2人が三連梯子を渡り要救助者に接触、再度、怪我等無いことを確認しました。その後、北救助隊員と山岳救助隊員が協力してハイラインを設定、要救助者にフルボディハーネス及びPFDを着装しハイラインに確保を取りながら三連梯子を渡り救助完了となりました。

 

管内には様々な観光スポットと併せて登山客が多く訪れる登山口が点在しており、コロナ禍以降、多くの方が登山にきております。今年度はさらに登山客が増えることを想定し当分署でも管内の山岳事故に対応できるよう訓練を実施してきました。そのような中、発生した今回の事案でありましたが、迅速な救助活動を行い要救助者の負担を軽減するなど安心と安全を提供することができ、今後も安心して富士宮市を訪れていただけるのではないかと思っています。」

▼【今回お話をうかがったのは。。。】

記事内の写真・内容は取材当時のものです。記事内の写真の無断転用を禁じます。