saver's

守るために働く人々をサポート

VOL.18 千葉県松戸市消防局の「救助工作車Ⅱ型」をセイバーズがレポート!

2022年6月

『市民と共に築く、災害に強いまち まつど』を実現するために!!

松戸市消防局は、千葉県の東葛飾地域(北西部)の一翼に位置しており、61.38k㎡の市域を管轄し、49万余人の市民を災害から守るという要務を担っている。

現在の消防体制(2022年6月)は、市内を10区域に分け、1局10消防署の組織体制で、職員数は507名(うち女性職員2名)で、消防車両は85台(うち救急車16台)を保有し、職員の平均年齢は38.8歳。

また、松戸市消防局では市民が安全で安心して暮らせるまちづくりを推進するため「市民と共に築く、災害に強いまち まつど」を基本理念に掲げ、その現実に向け職員一丸となって取組んでいる。

今回は令和4年3月に納入された救助工作車をセイバーズがリポート!

 

【どんなところ?】

千葉県内では千葉市、船橋市に次ぐ人口の松戸市は、江戸川を挟んで東京都に接している。都内へのアクセスが良いため住宅地も工業地帯も多い。そんな大都市にある松戸市消防局は、松戸市内を3方面に分け方面制を布いており、救助隊を3隊で運用している。五香救助隊は第3方面を管轄エリアとして活動している。
救助工作車Ⅲ型
シャーシ 日野レンジャー
全 長 7,980mm
全 幅 2,300mm 車両総重量 11,940kg
全 高 3,200mm
ホイールベース 4,000mm
最小回転半径 6.8m
全 幅 2,300mm 車両総重量 11,940kg
乗車定員 6名
総排気量 定格出力5.12kw
駆動形式 4×4
ウィンチ 大橋機産製
クレーン タダノ製2.93t
パワーゲート -
配備年月日 令和4年3月3日
艤装メーカー モリタ
-

署で力を入れている活動や訓練はありますか?

国際消防救助隊登録隊員2名、国際消防救助隊登録OB救助隊長が五香救助隊に配属されている(2022年6月時点)。それらの者が中心となり、震災救助活動対応への知識、技術を各隊員に普及させている。経験から培った知識、技術を様々な救助事象へ汎用させられる隊員を育て、精強な部隊を目指している。また、第47回消防救助技術千葉県大会においてブリ救チームが第1位、障害突破チームが第2位の好成績で関東大会に駒を進めた。

▼画面をタップしてください。

※音楽が流れます。

車両紹介

▲フロントデザイン

▲バックデザイン(小糸製作所製 流鏑馬)

▲WHELEN製赤色灯

 松戸市初のWHELEN製/赤色点滅灯連発仕様。点滅のパターンは数十パターン切り替え可能。

 

昼間点灯時

      ▲昼間点灯時

【左】収納部分

【右】収納部分

▲ルーフデザイン

広々キャブ天井ルーフデッキに「MATSUDO RESCUE」の文字。天井から地上への受け渡しの際に傷つかないようにガードを上面にも施工。

▲クレーン

コントローラーひとつでクレーン・照明・ウインチの操作が可能。クレーンも全て自動で収納(アウトリガーまで)できる。

▲バッテリー式送排風機

松戸市初!のバッテリー式送排風機RIGHT RESCUE SUPER VAC V18-BL。省スペースでの積載と搬送のし易さを重視して採用。

▲LEDクイックライト

ウェーバー社の可搬照明。

レスキューツールを全てウェーバー社のものに統一することで、アフターサービスや充電池などの互換性を持たせ活動の効率化を実現。

▲大型油圧救助器具

松戸市初採用のウェーバー社製電動油圧式レスキューツール『ウェーバーE-FORCE』。ロングストローク引出装置に積載。縁はシーミングを施工。

▲冷温庫

常時積載している可搬可能なマキタ製冷温庫『CW180DZ』は、バッテリー及び電源供給により保冷・保温ができる真夏の火災現場活動には必須の資機材。車取付けのAV100Vコンセントから通電でき、エンジン始動時も在庫時も電源供給可能。

▲プラットフォーム収納(横)

今まで縦置きだったレスキュープラットフォームも、横置きにすることでそのまま取り出すことができる。

▲エンジンカッター・チェーンソー

2段の引出装置に収納。

▲リアフェンダー収納庫

リアフェンダーにも収納庫を設け、スペースを有効活用。

▲ブロック収納

純正ボックスではなく、スリムに収納するために専用ボックス式。

▲路面警告灯『LED STREAM ONE』

夜間の道路上での救助活動時において、隊員の安全を確保するための路面警告灯。防水性・耐衝撃性に優れ、幅広い用途で使用できる。底面にマグネットを装備しており、車体にも設置可能。充電式で傾斜角センサーも内蔵している。

▲エントリーツール

各種エントリーツールをマキタ社製で統一。バッテリー・充電器等の互換性を持たせる。

▲簡易画像探査機

『OLYMPUS IPLEX G LIGHT』を採用。様々な現場に対応できる軽量小型。耐久性は◎

▲バスケット収納(縦)

 

使用頻度の高いバスケット担架の積載は、今まで横だったのを縦に収納することで取り出しやすさがグッとアップ。狭隘地や間隔の狭い車庫でも容易に出し入れ可能。

消防救助技術千葉県大会において上位入賞!

▲ロープブリッジ救出チーム

第47回消防救助技術千葉県大会において第1位で関東大会へ!!

▲障害突破チーム

第47回消防救助技術千葉県大会において第2位で関東大会へ!!

今までに、特に印象に残った救出活動などはありますか?

『平成26年7月に発生した、列車と乗用車の交通事故です。』

 

この救助事案は遮断機の無い踏切を横断中の乗用車と2両編成の単線列車が衝突し、列車は脱線、乗用車の2名が車両内から脱出不能な状態となり、救出までに長時間を要したものである。

 

 

列車内の乗客20名を車外へ避難誘導し、7名のトリアージを実施、3名が気分不快を訴え1名を救急搬送、列車損傷によりパンタグラフの降下が不能であったため、変電所からの送電を停止後救助活動が開始された。事故車両は列車の下敷きになった状態で潰されており、列車が横転する危険があるためプランジャーによる拡張が制限された。また活動スペースが狭隘、車両部署位置が200m遠方、気温が高く活動中にゲリラ豪雨が発生する等困難な救助活動となった。

 

 

乗用車は完全に潰されていて、要救助者2名の声は聞き取れるがどのような状態で挟まれているか姿が見えない状態。

大型油圧救助器具を活用して小破壊を繰り返す活動となる。同時に列車を除去するため大型クレーン車の要請をしたが、時間がかかるとのこと。乗用車を少しずつ切断除去してようやく助手席の要救助者が確認できた。座席背もたれに列車の荷重がかかっていたため、クッション材を除去するなどして事故発生から1時間12分後に救出した。

 

助手席の要救助者を救出すると、運転手の頭部が確認できた。受け答えははっきりしていたが、ロール状に破損した車内に胸部から下が挟まれていて、体の感覚がないとのことだった。ドクターによるクラッシュシンドロームのための製脈路確保を実施、輸液中は救助活動を停止したが、救助隊員による要救助者への励ましを継続して実施した。事故車両と列車機械部分からの異臭と気温30度以上の環境により活動隊員に体調不良者が発生。さらに輸液中にゲリラ豪雨が来襲し狭隘空間でのブルーシート展張に人員が割かれ、200mの資機材搬送距離に隊員の体力を消耗してしまうような状況だった。

 

活動は夜まで続き、事故発生から5時間25分後に民間25tラフタークレーン(線路走行可能車)が到着。後部列車を切り離し、鉄道会社職員が人力にて2車両目列車を移動させ、線路内にクレーン車を入れた。玉掛作業のための架線撤去作業を実施中も、不安定な列車に動揺を与えないように救助活動を継続、スプレッダーで拡張し油圧カッターで切断、プランジャーで戻りを防いでレシプロソーで切断といったことを繰り返し、事故発生から7時間14分後に車外へ救助した。この災害では不安定な状態で静止した列車を効果的に安定化することができず、活動が長期化した。この経験を踏まえ、救助用支柱器具の効果的な活用方法を検証し重量物を適切に安定化できるよう、隊では実車両等を使用して訓練を実施している。『救助隊全員が共通認識で活動できるよう知識と技術の統一を図り、継続して市民の負託に応えていきたい。』とのこと。

 

訓練・活動、何事にも妥協を許さない上昇志向と目的意識が各隊員から垣間見れた。

今回お話を伺ったのはこの人

kuramochisan1

防課

倉持 保さん

(くらもち たもつ)

消防司令補

矢野 隆三さん

(やの たかみつ)

COVER

上から順に

消防司令補

 安藤 直毅さん

(あんどう なおき)

消防士長

内田 康規さん

(うちだ やすのり

消防士長

芳賀 剛さん

(はが つよし)

消防士長

矢ノ倉 将志さん

(やのくら まさし)

消防士長

中津 連二郎さん

(なかつ れんじろう)

消防士

松井 泰洋さん

(まつい たいよう)

記事内の写真・内容は取材当時のものです。記事内の写真の無断転用を禁じます。