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VOL.28 【山梨県】笛吹市消防本部「救助工作車Ⅱ型」をセイバーズがレポート!

2026年2月

笛吹市消防本部エリアの特徴

本地域は、桃やぶどうの生産が盛んな地域であることから、農作業中の事故が多く発生しており、迅速な救急・救助活動を実施し、地域住民の安全確保に努めています。また、石和温泉街を抱えており、ホテルや旅館が立ち並ぶほか、その周辺には中高層マンションも多く存在しているため、高所からの救助を要する事案も発生しているため高所救助資器材を活用した救助活動も行っています。

高速道路や鉄道が管内を通過していることから、人身事故を含む鉄道事故や、高速道路上における交通事故への対応、そして国道20号(旧甲州街道)や国道137号など、山梨県を横断・縦断する主要なバイパス道路を有しているため、大型トラックや貨物車による交通事故や車両火災などの発生も多く見られ、管轄区域は、甲府盆地の一部から富士五湖地域へと続く山間地域にも及んでおり、橋梁や道路法面下への車両転落事故など、山間部特有の事案への対応も求められています。管内には複数の工業団地が所在していることから、化学事故や酸欠事故、危険物施設に起因する大規模火災など、特殊災害の発生にも備えた対応も強化し地域の安全と安心を支えています。

隊の特徴・力を入れている活動について

職員数は99名で管内人口約6万7千人の安心安全を守っています。組織は市の単独本部で署が1署と出張所が2所です。

勤務体系は3交替制であり、現場を担う消防署は警防救助担当、救急担当、予防担当に分かれていますが、現場活動は兼任隊となっているため、火災、救急、救助と幅広い知識と技術が求められます。そのため、日常業務は現場最優先のもとに各種訓練を主体として勤務が行われています。各分野に捉われず現場職員が一丸となって各種訓練を行い現場活動力の向上に努めています。

 

隊のスローガン(一番意識している部分)は、「要救助者にとって何がいいのか」を常に考え訓練や活動を行っています。これは当たり前に感じるかもしれませんが実際に訓練を行っていると、活動の手法や技術に意識が向いてしまい、いつしか要救助者が置き去りの状態で自己満足の訓練になりがちになるのがどこの消防本部でもあるあるなのではないかと思います。そのような助ける側本位の活動ではなく要救助者が何を求めているのか、どのようにすれば要救助者にとって最善なのかを常に忘れずに訓練を行っています。

一例としては、交通救助やロープレスキュー訓練時等においてもできる限り要救助者役は職員が行い常に生身の人間を扱いその意識を高めています。そこから生まれる課題はマニュアルや操法には記載されていない部分であり、観察や処置、またそれらの優先度等はすべての現場ですべて違うものだからこそマニュアル等にとらわれすぎずにその場に合った対応を意識し業務に取り組んでいます。

 

笛吹市は山梨県の中央、甲府盆地の東側に位置し、石和温泉などの温泉地や桃やブドウの果樹の生産が盛んな地域。

管内には鉄道や高速道路、石和温泉宿泊施設や住宅密集地があり、また、現在建設中のリニア中央新幹線の通過地域でもあるため、一般救助資機材に加え、さまざまな現場での救助を想定した資機材や大型車両の事故も想定した資機材等をバランスよく積載している。

 

【外観デザイン】
新車両のデザインには特にこだわり、 コンセプトとして「職員自身がかっこいいと思え、こ の車両へ乗ることを憧れるようなデザイン」「この車両に乗ることでさらなる自覚とモチベ ーションが上がるようなデザイン」「一般市民からの目に留まり、 見るだけで頼もしく感じられるようなデザイン」とした。消防の象徴であるフレイムス(炎のマーク)を夜間でも視認できるよう再帰性反射素材として施した。また、通常救助工作車では「RESCUE」という文字を車両側面に施すが、当本部は兼任救助隊であることや救助以外にもどのような事案に対しても対応する任務部隊という意味を込めて「TASK FORCE」という文字を車両側面にあしらった。当然救助隊であることがわかる「RESCUE」については車両前後およびクレーンのブームに施している。車両の配色にもこだわり、前後のバウシャックルや後部のステップ、また、側面の支点フックなど所々にラプターライナー塗装を施し朱色の消防車両に黒のアクセントでスタイリッシュなイメ ージとなるよう配色した。

施設紹介

車輛積載品

【車載器材】

ウェーバー電動油圧資機材、電動工具、レスキューサポート、空気式救助マット、画像探索機II型、作業台、アリゾナボーテックス、バッテリー式送風機、各種救出資機材、ロープレスキュー資機材等


【事案用途ごとにまとめられた資機材配置】
事案ごとに効率的に資機材の取り出しや活動が行えるように、用途ごとにまとめた資機材を積載スペースに無駄なく配置している。

 

【レスキューサポートを新規導入】

複雑多様化する災害に対しての対応力を向上するため、新たに救助用支柱器具であるレスキューサポートを導入。管内は旧耐震基準時代に建てられた古くからの木造住宅密集地も点在しているため、大規模震災時には多数の倒壊建物の発生も危惧されており、小規模組織の中で一人でも多くの人命を救助するため、効率的にショアリング等の建物安定化を実施することが可能となった。また、サポート(支柱)本体の収納方法にもこだわり、多くの場合支柱を横向きに積載するのが一般的であるが、展開式扉に支柱を縦積みに積載することにより、より迅速に資器材の取り出しが行えることで活動の効率化に繋がっている。

【アリゾナボーテックスを新規導入】
当本部では、高所作業における労働安全衛生法の改正とともに、高所やロープを使用した活動の見直しを行い、従来の三つ打ちロープからスタティックロープを使用した活動へと移行し運用を行ってきた。今回の車両更新時にはさらに活動の幅を広げるためにアリゾナボーテックスレスキューフレームを導入した。

【ロープレスキュー資機材が豊富】

上記の理由に加え、隊員及び要救助者にとっての安全や確実性、活動全般における安定性を高めるため、組織一丸となってロープレスキューを取り組んでおり、県内でもロープレスキューの運用実績は大きい。資器材についても順次更新や増強を行いながらどのような活動環境においても対応できるよう資器材配備を行っている。また、救助隊員のみではなく現場活動を行うすべての職員とともに共有を図り取り組んでいる。

 

【動力資機材のほとんどがバッテリー式を採用】

救助資機材を代表する大型油圧資機材やレシプロソーやドリルドライバーなどの細かな資機材、また投光器や送風機に至るまですべて統一したバッテリーを採用することで、資機材点数を減らすことができ活動時の作業が格段に簡素化することができる。さらに同一メーカー(ミルウォーキー)のバッテリー互換性のある資機材を採用することでバッテリー総数を抑えることができランニングコストの低減も実現した。

ロープレスキュー訓練の様子

【今までで特に印象に残った救助活動を教えてください!】

大型トラック同士の正面衝突事故により、片方のトラックの運転手が下肢を挟まれた事案。両車両はオフセット衝突により連転席同士が張り付いた状態で一方の運転手は車外へ脱出済みであったがもう一方の運転手は潰されたフロント部分に下腿部が挟まれており脱出不可能であった。要救助者への接触は運転席側が相手方の大型トラック(20t)が障害となっていたため助手席側からの接触のみしか不可能であった。また、挟まれた下肢を開放するために油圧資機材を使用し挟まれ部分を拡張する方針であったが、両車両を引き剥がさないことには活動ができないと判断するも、大型車両であるため救助工作車積載のウインチでは能力限界ギリギリの攻防であることが予想された。ウインチで事故車両をけん引するも予想通り15cmほどしかけん引できず、運転席側からの救助活動は不可能であったため助手席側から救助活動を展開することとなった。運転席には要救助者がおり、車体も高度に変形していたため油圧資機材を設定する位置も数cm程度の隙間しかない中で要救助者の近い位置での資機材の使用は様々なリスクがあったが、日ごろからの「要救助者にとってなにがベストか」を意識し訓練していたことで要救助者に対して負荷をかけずに救出できた事案であった。
発生日:2025年10月

笛吹市消防本部のみなさま

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